原始反射ステージ3終了後の変化

 

 

 

自己意識-身体像と体性感覚

 自分自身を意識することを自己意識self awarenessと言いますが、生理学的にはこれは自分の身体を意識することを意味します。自己意識には自分の容姿や性格、癖など心理的な要素も関係しますが、これらは過分に哲学的な意味を含み論理的な解釈は困難です。そこで、ここでは生理学的な意味における自己意識について言及することにします。

 私たちが自分自身の身体を意識するのは、手や足など自分の身体の一部を見、触れ、自分で自分の話声を聴き、暑さや寒さを肌に感じ、また、生活の中でさまざまな動作をするときです。つまり、人間は物理的な存在としての身体を認識することで自分自身を意識しています。

 

 興味深いことに、人間の身体認識は、自分の姿を鏡に映して確認すること(視覚的自己像)によるのではなく(これは後天的に学習によって獲得する)、自分の姿勢や関節の位置を認知して形作られる三次元の身体像body imageによって生じるといいます。

 

 つまり、自己認識の基本は体性感覚なのです。姿勢や位置の感覚の主な受容器は筋紡錘*で、これに補助的に関節の受容器(角度や位置の感覚受容器)や腱紡錘(腱の伸張受容器)、そして視覚や聴覚、平衡感覚も働きます。身体像はまた、身体の前後、左右、上下の自分を中心とした空間を含めた認識によって成り立ちます。これによって移動や定位が可能になるわけです。

 こうした感覚は通常は慣れによって意識にのぼることはありませんが、これらの空間認識機構が障害を受けた場合の精神的ダメージについて、私たちは注意しておく必要があります。

 例えばメニエール病などの平衡感覚障害のある患者さんには、単に転倒や障害物への衝突の危険性があるというだけでなく、身体像の認識障害が起こることによって「自己認識や自己意識が脅かされる」という強い不安があります。また、脳梗塞の後遺症で手足にしびれがある患者さんなどにも、同様の理由から心理的なサポートが必要です。これまであまり留意されてこなかったかもしれませんが、視覚や聴覚に限らず、身体像の形成に係わるその他の感覚器が障害された患者さんの精神的ケアは非常に重要なのです。

 

 

 

【前庭動眼反射】

前庭眼反射ともいう。頭が動いたときにこれと反対方向に眼球を動かして網膜に映る外界の像のぶれを防ぎ,頭が動いているときにものが見えにくくならぬように働く一種の反射である。内耳中の前庭器官が頭の動きを検出して神経信号を発射すると,これが前庭神経を介して延髄に送られ,前庭核で中継された後,眼球を動かす外眼筋の運動ニューロンへと伝えられる。前庭核内の中継ニューロンには興奮性と抑制性の2種類があり,一つの筋肉が収縮すると同時にこれと拮抗する筋肉が弛緩して眼球が一方向に動く仕組みになっている。

 

 

【視覚性立ち直り反射】

立ち直り反射(立ち直り反応)とは、赤ちゃんの姿勢が崩れたときに、頭や身体を元の位置に戻して直立姿勢を保とうとする姿勢反射です。

立ち直り反射によって起こる反応を立ち直り反応といいます。

英語では「righting reflex」と表記し、日本語では立ち直り反射と訳されます。

生まれたばかりの赤ちゃんは、姿勢が崩れると重力の影響を受けて頭から地面に衝突します。

しかし、立ち直り反射を獲得した後は、姿勢が崩れると、反射的に重力に抗って直立姿勢を保とうとするようになります。

立ち直り反射による反応によって崩れた姿勢を立て直せるようになると、転倒や衝突で頭などに怪我をするリスクが下がります。

また、立ち直り反射は、寝返りなどの動きにも関与し、赤ちゃんの発達において重要な役割を果たすことが分かっています。

 

健全な態度15段階